ビッグバスを水面に浮かせて獲る!PROPDARTER i-LOUD メガバス水面攪拌系ベイトの系譜 | Megabass-メガバス

ビッグバスを水面に浮かせて獲る!PROPDARTER i-LOUD メガバス水面攪拌系ベイトの系譜

The History of Megabass Vol.6

ビッグバスを水面に浮かせて獲る!

PROPDARTER i-LOUD メガバス水面攪拌系ベイトの系譜

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ビッグバスを水面に浮かせて獲る!この最もエキサイティングでアグレッシブなゲームスタイルは、メガバス&アイティーオーエンジニアリングの真骨頂。ただリールを巻くだけでニュートラルな魚の捕食中枢を刺激する名作を数多く輩出してきた。2016年、そのサーフェスカテゴリーにi-LOUDが加わったことを機に、メガバスの水面攪拌系ルアーの歴史を遡ってみたい。

 

原点はプロップダーター80

ロッドを立ててリトリーブするだけで、魔法のようにバスを呼び寄せてしまう。そんなメガバスの水面攪拌系ベイトの原点は、1998年に発表されたX-80プロップダーターに見て取ることができる。

 

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PROP DARTER 80   Length : 80.5mm  Weight : 1/4oz.

 

プロップダーター80は、ジャークベイトとして開発中だったメガバス製X-80トリックダーターに、アイティーオーがチューニングを施して完成した、当時としてはほかに類を見ないシャイナーフォルムのリップ付スイッシャーであり、ボイルアクションをほぼ水面にて意図的に生み出すトップウォーターベイト。オイカワやウグイ、モロコといった、豊かな体高をもつ日本のベイトフィッシュを忠実に再現したこのフォルムは、プロップダーターのリアルな生命感をより確かなものとし、圧倒的な釣果はもちろん、細いか、偏平かの二者択一だった当時のルアーデザインに大きなインパクトを与えたのである。

そのチューニングを簡潔に言うと、トリックダーターのモールドにシムを噛まして容積を増し、浮力を高め、リップ形状と内部構造を最適化したうえで「不等長ペラ」と呼ばれる左右非対称のプロップを付けた…ということになるが、もちろんそれほど単純なものではない。この当時、プロップダーターを開発するに至った経緯をデザイナーの伊東自身が綴っているので、原文のまま紹介しよう。
「メガバス製X-80(トリックダーター)を、純然たるジャークベイトとして開発中のこと、琵琶湖でテスト中、私は湖東のウィードエリアで、凄まじいボイルと遭遇した。このとき突如、新型トップウォータープラグのアイデアが浮かび、それがプロップダーターの構想へと発展していく。ジャークベイトとしてX-80を作りこんでいくうちに、ジャークベイトとはまったく用途の異なるルアーの開発に着手することになったのだ。この時、X-80もまだ完成していなかった。

そこで、製作中のX-80の金型を一部改良し、この新型プラグの開発に流用できないかと考えた。しかし、これがなかなかうまくいかない。まず、X-80のボディをそのまま流用してはプロップの装着ができない。さらに、プロップダーターのようなトップウォータープラグの場合、X-80のような重心移動を必要としないので、内部構造が大幅に異なる。なお、X-80はサスペンドを狙った体積で設計していた。トップウォータープラグとして作るなら、もっとボディ体積を確保したい。つまり、プロップダーター用の金型を新規に設計したほうが早くて合理的。結局、ゼロから作り直したほうが早いのだ。

普通なら、そうするのだが、アイティーオーエンジニアリングでは、あえて普通ではない方法を選んだ。このまま、メガバスで開発中のX-80を製品化させ、同一金型で、もうひとつのルアー(プロップダーター)をアイティーオーが製品化するという方法だ。同一金型をフレキシブルにコンバージョンするために、『スライドコア』の研究や、体積や構造の変更に対してフレキシブルに対応する『組木細工式モールド』の開発など、金型生産の手法を開発する良い機会として、アイティーオーでは、あえてX-80のモールドを使って、まったく別用途で使うプロップダーターを作る道を選んだのだ。

こうして、プロップダーターは、メガバス製X-80とは活躍する状況がまったく異なる、トップウォーターで使えるスイッシャータイプのミノーとしてデビューした。その後、追ってデビューした同類のプラグたちを見ると、リアプロップの取り付け角度をはじめ、リップ形状などの基本的な概念について、プロップダーターを研究した痕跡が見て取れる。

プロップダーターは、メガバス製のX-80というサスペンドミノーとしてデザインされたボディを流用しながら、力学的な制約と、同一金型を使用するという制約を乗り越え、まったく別種のプラグとして誕生した。この金型チューニングによって確立した3次元スライドコアや、メガバス独自の組木式モールドは、その後デビューしたPOPMAXやサイクロンの金型製作に応用され、近代メガバスの技術的な屋台骨へと発展を遂げたのだ」。

(内外出版社『メガバスの証』より引用)

 

 

ローラージャイロ・バランサー搭載  アンスラックス

プロップダーターから6年後の2005年、メガバスが発表した次なる水面撹拌系ベイトがアンスラックスである。

 

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ANTHRAX   Length : 83.0mm  Weight : 3/8oz.

 

アンスラックスは、ローラージャイロ・バランサーシステムを搭載し、多彩なアクションを演出するよう設計されたルアー。この機構により、ロッドを立てた状態でのリトリーブでは、強力に水面を攪拌するだけでなく、ローラーシャフト上を転移するボールがクリックサウンドを発しながら常識外れのスーパーローリングアクションを発生。このとき水面上に張り出したフィンが左右にテイリングして水流をかき分け、独特の三角波が相乗効果となってバスにアピールした。現在につながる画期的な機構を取り入れ、サーフェスルアーとしての新境地を切り拓いたアンスラックスは、メガバスの水面攪拌系ベイトを語るうえで外すことのできない存在だろう。

 

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破壊力MAX! i-JACK登場

プロップダーターでも、アンスラックスでもキーワードとなった“左右に倒れこむほどのローリングアクション”は、水面撹拌と同時に「明滅効果」という意味でも、メガバスルアーの重要なファクター。そのアクションをさらに高め、ウェイクベイトとしての破壊力を極めたのが、2015年に発表されたi-JACKである。

 

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i-JACK   Length : 107.7mm  Weight : 1oz.

 

107.7mm、1oz.と、スケール感満点のボディを誇るi-JACK は、十分にボリューミーでありながらビッグベイトほど大きくはなく、メリハリのきいたウォブンロールが引き起こす引き波とサウンドで波・風をものともしない存在感を発揮。小規模レイクやシャローエリアはもちろんのこと、ビッグフィールドやディープレンジ、マッディコンディションにおいてもバスを呼び寄せ、浮かせる力を見せつけた。そしてこのメリハリのきいたウォブンロールを、より強調するために開発された新機構が、R.A.B.(ラダーアクション・バランサー)である。

 

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R.A.B.は、その名の通り、舵(ラダー)のような金属板の先に付けたヒッティングウェイトが、ルアーのウォブンロールアクションに合わせて左右に振り子運動をし、その際にボディ内部の側壁と接触することで大音量の硬質サウンドと衝撃波を発生する仕組み。さらにR.A.B.が生み出すキレのあるスクリュードライブアクションは、光の明滅を広域に拡散、光と音波の相乗効果でモンスターバスの捕食本能を刺激する。

 

 

そしてついに覚醒  超・強攪拌ハイパーベイト
PROP DARTER i-LOUD

こうして、ウェイクベイトのカテゴリーに斬新なテクノロジーを開発していく流れと並行して、アイティーオーでは新たなジョインテッド・プロップベイトの開発に着手。水面における「リアルフィーディングアクション+フィーディングサウンド」で独自のキャラクターを確立したプロップダーターに、18年ぶりに新しいファミリーが加わったのである。R.A.B.が繰り出す振り子運動とサウンドにプラスして、ジョイントボディが大きくクロールしながらスイッシュサウンドを発生させる。それが超・強攪拌ハイパーベイト・i-LOUDである。

 

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PROP DARTER i-LOUD   Length : 103mm  Weight : 1oz.

 

まったくやる気のない魚に対しても、あくまでもアグレッシブなアプローチでフィーディングスイッチを入れるメガバスの水面攪拌系ルアー。オリジナルサイズのプロップダーターとi-LOUDを適材適所に使いこなせば、その爆発力は季節もフィールドも選ばない。

 

 

デザイナーズボイス:「リアルならオリジナル、パワーならi-LOUD」

「オリジナルのプロップダーター80は、水面で捕食されるフィーディングベイトを演出するルアー。水面でヒラを打ち、のた打ち回るローリングアクションとスイッシュサウンドで、逃げ回るベイトやバスのチェイス、ボイルを再現し、なおかつ魚をスレさせないサイズとリアリティが大きな武器。そのため野池でもビッグレイクでも変わらぬ爆発力を持ち、アメリカのトーナメントでもシークレットベイトとして契約外のプロたちからも多用されてきた。

いっぽうi-LOUDは、オリジナルよりもっと強いインパクトと圧倒的な飛距離を誇り、より遠くの、より深いレンジに定位するバスをもロックオンさせてしまうパワーを持っている。どちらもバスを水面に呼び寄せる力は大きいが、使い分けるなら、リアリティーとパワーの差が決め手となる。つまり、無風・ベタ凪のようなナーバスなコンディションや、小規模フィールドでのフィネス的なアプローチにはプロップダーター80のナチュラルな水面撹拌が有利。荒れ模様の時や、ディスタンスゲームでより遠くのビッグのみに狙いを絞るとき、あるいはプロップダーターではアピールが弱いと感じるときはi-LOUDを選ぶ、というのがひとつの目安になる。

実際に、風が強く水面が波立っているような条件において、i-LOUDは波風に負けないどころか、左右に倒れ込むR.A.B.と、R.A.B.のヒッティングサウンド、そしてそれに追従して大きく舵を切るようにテーリングするジョイントテールとスイッシュサウンドなどの複合インパクトによって、むしろ際立った存在としてフィーディングのきっかけを作ることさえある。また晩夏から晩秋にかけてのターンオーバー時、いわゆるバドパターンという状況において、バドやゴングではリアルさに欠ける、強すぎるという場面も、軽快に引けて、ナチュラルかつアピールが大きいi-LOUDの出しどころだ。河川においては、これからの落ちアユのシーズンが楽しみ。プロップダーター80も落ちアユパターンには強いが、もう少し大きなサイズで落ちアユを模したいというシーンでは、i-LOUDが最強。なお、この撹拌力はシーバスにも非常に効果的で、プロトタイプでは荒食いを経験している」。