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MEGABASS Engineering Team Blog Vol.82

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S-CRANK(エス・クランク) とは? Vol.2  (T-012)

 

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プロジェクトSTWからリリースする「S-CRANK」の、誕生秘話から、製品のこだわりなどを、ご紹介します。

前回の第1話はこちら。

http://www.megabass.co.jp/site/engineer/megabass-engineering-team-blog-vol-71/

 

 

第2話 「S-CRANKがS字に動く理由」

 

S-CRANKについてですが、まずはそのアクションをご覧下さい。

 

 

さて、このS-CRANKですが、現在アメリカで発売されているモデルは2種類あります。

■S-CRANK 1.5 Length:65.6mm  Weight:1/2oz.  Depth:1.5m

■S-CRANK 1.2  Length:60.0mm  Weight:3/8oz.  Depth:1.2m

 

ご覧の通り、製品名の後ろの数字は潜行深度(m)を示すものです。

 

さて、このS-CRANKですが、大きく分けて3つの「こだわり」があります。

①    S字軌道を伴ったタイトウォブリングアクション

②    秀でた障害物回避性能

③    全サイレントタイトアクション

この、3つの「こだわり」を具現化しているのがS-CRANKというわけです。

 

そのこだわりを1つずつ掘り下げていきましょう。

 

まず、①のS字軌道を伴ったタイトウォブリングアクションについてです。

 

ここで特筆すべきはS-CRANKで一番の特徴である、S字軌道です。スラロームしながら泳ぐクランクベイトですね。

 

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では、なぜS-CRANKはS字軌道するのか。

重要なのは、ヘッド形状とリップにあります。

 

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まずは、ボディのヘッド形状。真上から見ると、特徴的な先端が尖った形をしています。

(A)

このエッジの効いた尖ったヘッドがS字軌道の全てと言ってもいいほど重要なギミックです。

 

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従来のクランクベイトのヘッド形状は、水を受け流すという丸みのある形状であるのに対し、S-CRANKは先にも述べたとおり、尖ったヘッド形状をしているため、「水を切る」という発想でS字軌道を生み出します。

 

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■ヘッド形状のサンプル達。0.1mm間隔でAの角度を調整したボツプロトの一部。ここにボディの長さ、ウエイトの重量、リップの形状などで派生させていくと、膨大なプロトの数になるのは開発ではよく見る光景。この写真にはなく、海を越えてアメリカにもたくさんのプロトタイプがあります。USAプロスタッフである、ルーク・クローセンが実釣ムービーで使用しているのも、この中にある同じタイプのものです。

 

 

さて次に、顔のおでこの部分(B)に凹みがあります。これは、S字軌道を助長するギミックだけでなく、泳ぎ出しを良くしたり、潜行深度を下げる役割もあります。

また、リップの装着角度、位置なども(C)、理想のアクションを再現する為の重要なギミックです。

 

この、ABC3つのギミックの黄金比で、S字軌道を伴った理想的なアクション

(Slalom Action System : PAT.P)を再現できるのです。

 

 

 

次に②の、障害物回避性能です。

 

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回避性能に関しては、2点。

まず、一般的なクランクベイトよりもS-CRANKは高浮力であること。上の写真の通り、お腹がぷっくりと出た、アメリカンなクランクベイトの形状をしています。これにより、より多くの容積を確保し浮力を高めています。

さらに、スクエアリップであるということ。一般的にスクエアリップのクランクベイトは回避性能が高いと言われていますが、そこに先に述べた高浮力があいまって、高次元での障害物回避性能を実現しています。

是非、中層をスイミングさせるだけでなく、リップラップなどの障害物にガンガン当てながら使用してみてください。

 

 

最後に③の完全サイレント&タイトアクションです。

まず、完全サイレントにするのに不可欠なのが、内部に搭載しているウエイトのガタつきを完全に無くす事です。S-CRANKにも見た目は、ただの丸いウエイトに見えますが、特殊な成型ウエイトを使用しています。この成型ウエイトを内臓するウエイトルームは、生産効率を考えると少しのクリアランスが必要です。ただ、それゆえに1%にも満たないですが、カタカタと内部でウエイトが遊んでしまうことがあるのが欠点でした。

 

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そこで、S-CRANKには、ガタつきを完全に無くす新しいウエイトの固定方法で、ウエイトの遊びをゼロにする事に成功しました。この新しい固定方法は、S-CRANKだけでなく、後のイーラなどの製品にも使われています。

 

そして、ラインアイの位置やリップ角度などで、ワイドウォブリングではなく、タイトなウォブリングアクションに設定。これにより、全米トーナメントにおいて、同じスポットでも何本もの魚をキャッチ出来る、完全サイレント&タイトウォブリングのアクションを再現しました。

このアクションは、比較的水質がクリアなリザーバーなどでも効果があり、アメリカでは勿論の事、日本でのテストでも小規模なダム湖やリザーバーなどで効果があります。

 

ここまでが、長々と書いてきましたがS-CRANKのアクションの「こだわり」です。

では、S-CRANK1.5と1.2では、どんな違いがあるのか。

それは、単なる等倍縮小ではなく、S-CRANK1.5とは違った、1.2独自のヘッドの薄さに吟味を重ねたものになっております。

 

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上の写真をご覧になれば一目瞭然、1.5より1.2のヘッド形状は薄くデザインされています。

1.2は1.5に比べ全てにおいて小さい力がボディにかかります。ボディに受ける水の抵抗は小さく、内臓ウエイトも軽い。そうすれば、おのずとS字の幅も1.5に比べて狭くなります。

そこで、1.5よりもヘッド形状を薄く尖った形状にし、より多くの「水を切る」ようにデザインしています。これにより、1.5よりも狭いS字幅でも、スラロームしながらも、若干イレギュラーアクションを演出し、1.5にも劣らないアピール力を兼ね備えました。

 

最後に、S-CRANKの使用方法としては、勿論ただ巻くだけです。

が、極端なスローリトリーブでは、スラロームアクションはしません。ある一定のスピードに到達したときに、スラロームを描き始めます。

そのスピードこそが、USAトーナメントで戦うメガバスプロスタッフ達のクランクベイトの基準となるスピードであり、理想のスピードなのです。もしかすると、早いかな?と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、そのスラロームが出るスピードで巻き続けてみてください。

おのずと結果はついてきます。

 

 

特徴的な、薄く尖ったヘッド形状をもつ「S-CRANK」。次回、最終回となる第3話は、今回のアクション以外の、「こだわり」について、お話したいと思います。

メガバスで生まれ、アメリカで育ったS-CRANK。是非、手にとってフィールドに出掛けてみて下さい。

 

 

 

S-CRANK(エス・クランク)  Products Page

http://www.megabass.co.jp/site/products/s-crank/

 

※写真はプロトです。