感性を研ぎ澄ます、匠のペイント。FINE ART FINISH

文=Basser編集部(つり人社)
Basser 2020年11月号掲載

 

8分前に放たれた太陽光の幸せなひと筋、その反射。

店頭から連れ出して、箱から出して、
太陽光をぶつけて、
見てほしい。
はね返ってくる色の数と力強さが、LEDライトの下とは桁違いだから

写真  ©津留崎健


マイスター謹製

静岡県浜松市のメガバス本社工場、その3階で同社のルアーは塗られている。リアルフィニッシュにはプリント(転写印刷)という手法も昔から採られているが、メガバスのそれはペイント(塗装)だ。

素材がウッドであろうとプラスチックであろうと、組み立てるのも、表面を研磨して均すのも、塗るのも、人の手による仕事だ。それゆえに塗装の緻密さがここまで極まると、マスプロダクトとしてのルアーの製造に“ある問題”が生じるのではないだろうか。メガバスの新たな塗装法であるこの「ファインアートフィニッシュ」は誰にでも塗れるものではない。大量生産に向かない、という問題だ。これについて伊東由樹さんは次のように言う。

「ファインアートフィニッシュの塗装は、弊社で“マイスター”と呼んでいるベテラン・ペインターが担当しています。メガバスでは第2世代、第3世代のペインターも育っていて、この塗りのレベルで量産できる体制が整っています。(メガバス創業から)33年経ったら、こういう時代が来たかと、感慨深いものがありますね」

本社工場3階の塗装フロアで熟練の“マイスター”たちが腕をふるっている


 

婚姻色が鮮やかなオイカワ♂も、ちょっとさびたアユも、産地別に特徴を塗り分けたワカサギも、魚類図鑑に掲載できそうなリアルさだ。プラモデル塗装でいうところのウェザリング(ヨゴシ)の領域にまで踏み込んだ感さえある。

一方で、しかし、そのリアルさのなかに“ルアーとしての深み”がたしかに存在しているのは、プリントではなくペイントにこだわってきた成果だろう。転写印刷によるオイカワ♂はそのままオイカワ♂だが、ペイントの場合は、表現に少なくともふたつの選択肢がある。モデルのオイカワ♂を忠実に模写するか、オイカワ♂をルアーカラーに落とし込んでデザインするか。ファインアートフィニッシュは後者。ワンテンを例にすれば、そのシャープな稜線を活かして色や光の透過度合を切り替え、使用時のフラッシングと色調変化を際立たせている。

 このように光の透過度合をゼロから100まで操れることが、ルアー塗装におけるプラスチック最大のアドバンテージだろう。ウッドや発泡樹脂は不透過の一択だが、プラスチックなら下地を施してのベタ塗りからクリアまで無段階に表現の幅が広がる。その表現力に、世界で最も秀でているルアーメーカーがメガバスだと記者は考える。

 

“リアル”の威力を知った日

伊東さんの“その日”は、今から約30年前、メガバス創業当時に遡る。

「芦ノ湖でトラウトを釣ったときのことです。私はラパラのフローティングでさまざまなテクニックを駆使してどうにか5、6尾、当時としてはかなり苦戦した一日を終えて戻ったら、桟橋にいた方が『あっちのアングラーが50尾釣ったよ』って言うんです。その方は、後にウッドベイトを作ることになる遠藤龍美さんで、使っているルアーを見せていただいたら、それはもう本物と見紛うばかりにリアルなウッドカービングのワカサギでした。ヘッドにラインアイが付いていて、お尻のアイにシングルフックがひとつ付いている、リップレスミノーというか、今風にいえばI字系というか……。

ただ、そのときのルアーは、リップレスミノーやI字系として作っていないから、引けば横倒しになってスーッと手前にくる。昔のことなのでお許し願いたいのですが、失礼ながらそれは、ただひたすらリアルなだけのウッドカービング・ワカサギでした。けれど、だからこそ、です。釣れる要素が“本物と似ているだけ”だったからこそ、リアルであることの威力を思い知らされた。ラパラのフローティングでまさに桁違いで釣り負けたあの日は、私の転機のひとつです」

 

釣魚としてのバス研究から

伊東さんはバスを長年にわたってさまざまな角度から研究している。レベルXや自社の研究施設(養鰻場跡の研究池)だけでなく、静岡県の水産・海洋技術研究所ともタイアップしながら“釣魚としてのバス”を考察してきた研究成果の要点のみをまとめる。

■バスの視力は0・17~0.2

■ピント調節機能とモノの識別力に優れる

■線視力に優れる

最後の「線視力」については……。

「直線状のモノを見分ける能力、とでも言いましょうか。これは、ピンと張った釣りイトへの警戒心につながる能力にもなり得ます。一方で、ワカサギやイワシなどの細長いベイトフィッシュが遊泳中に放つレイライン(光線)も直線状ですから、フィッシュイーターにとっての線視力は、遠くからエサの存在に気づく能力として活かされている可能性があります。考えてみれば、長くフィッシュイーターを魅了し続けているルアーは、たとえばラパラにせよ何にせよ、ローリングアクションをベースにしているモノが多い。アクションの軸を水平方向に通して、体側にきれいな光の帯が引かれているようなルアーです。

私は、あらゆるレイラインがバスの線視力に訴えかけるのではないかと考えています。ルアーのシャープな稜線を活かした塗装デザインも、塗り分けた透過・不透過の境界線も。ファインアートフィニッシュには、メガバスと私のバスという釣魚への知見も込められているんです」

 

FINE ART FINISH ColorList

FA紀州アユFAオイカワ♂FAギルFAワカサギFAゴーストワカサギ

日本のバスフィッシングにおける定番中の定番のベイトフィッシュである鮎を メガバス独自のファインアートフィニッシュによりスペシャルペイント。ベイトフィッシュに特化したパターンだけでなく、フィールド、水質などのシチュエーション問わず、安定した釣果を叩き出す王道のベイトフィッシュカラー。

多くのリザーバーやハイランドレイクのインレットパターン及び、リバーフィールドのシャローエリアでは無くてはならないベイトフィッシュカラー。古くからメガバスルアーのベイトフィッシュカラーの代表格となっていたオイカワ♂カラーをファインアートフィニッシュによりブラッシュアップ。よりリアルでナチュラルカラ-としてだけではなく、特徴的な婚姻色のアピールカラーとしての側面も併せもつカラー。

あらゆるフィールドに生息しているギルをファインアートフィニッシュにより スペシャルペイント。そのリアリティ溢れるカラーはクリアウォーターからマッディ ウォーターまで水質問わず安定した釣獲力を誇る。

ワカサギがベイトフィッシュのフィールドでは必須となる、「ど定番」カラーをファインアートフィニッシュにより、「生感」をさらに追及したスペシャルカラー。その生感はワカサギが居ないフィールドにおいても威力を発揮するでしょう。

ハイランドレイクや、リザーバーにおいて通年のベイトフィッシュとなるワカサギを艶めかしい透け感をファインアートフィニッシュによりスペシャルペイント。 その透明感は日中の太陽光を取り込み乱反射させ、遠くの魚までアピールする、ナチュラルとアピール力を併せ持つカラー。

 

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