こんにちは!メガバス・スタッフの山梨の中澤です。
9月とはなりましたが引き続き夏日な暑い毎日でございまして、私は相変わらず涼を求めて山奥へ逃げこんでおります。
渓流シーズンも残り一ヶ月を切りましたが、下界よりも一足早く着実に秋めき始めている源流域・・・そんな山奥で先日体験した出来事をご報告したいと思います。
山奥にある此の川は、地図にも載らない小さな小さな枝川でございまして・・・とある川の源流探訪の最中、偶然見つけた川でした。
魚影は、まあ・・・普通。(笑)
時折尺近いサイズと思しき岩魚の姿が確認できたので、個人的には昨今の渓流事情としては好印象な川なのですが・・・如何せん「山奥なのに」魚がシビア・・・(苦笑)
小型の魚ですらワンチェイスのみ、しかも超ショートバイト・・・。それなりのサイズの魚は(ルアーに興味があるのかないのか?)最初からスローにチェイスし始め、違和感を感じた途端に即ターン!?それきり二度と岩陰よりでてこないという展開ばかりで・・・とにかく手強いのです。
そこで私は、一筋縄ではいかない魚達を何とか攻略すべく・・・「雨後のタイミング」をひたすら狙い、再び釣行してみたのでした。
そうして迎えた雨後の此の日、期待通りな「やや増水」の「ササ濁り」という状況で、釣行タイミング的にベストな感触の中、ミノーを撃ちながら川を遡行して行ったのですが、先日とは打って変わって20cm前後のサイズの岩魚達が、とりあえずファーストキャストに対しては違和感無く好反応してくれまして・・・(笑)
私は、やや多い水量を鑑みて重めの GH51 HUMPBACK (TAKUMI IWANA)を用いていたのですが、ポロポロと安定してイワナが釣れ、いよいよ要所では期待通りに尺サイズの岩魚も現れてくれました!
そんな感じで、「雨後の効果」に感心しながら釣り登る事3時間程・・・増水しているとは言え、いよいよ川幅は狭く、水深も浅くなってきた川・・・
魚影的にも明らかに下流域より薄くなった感がありましたので、視界に見える魚止めと思しき滝までやって帰路に着こうと決め、歩を進めようとした時でした。
目の前の淵・・・数m先にある魚止めとなる二つの滝からの流れが合流している小さな淵。
左右からの流れで水面は揺らぎ、おまけにササ濁りに霞んでいるのでハッキリとは見えませんが・・・淵の規模に対して明らかに違和感のある「黒く長い影」が3本・・・ぼんやりと流れの中で揺れています!?
丁度、逆V字の編隊を組むかのように・・・淵の上流、落ち込み直下に先頭の1匹。その後方、淵尻の石の前に左右に分かれて2匹が綺麗にポジションをとって佇んでいるのですが・・・そのサイズ感がおかしかった。
後方の左右に控えた2匹は確実に尺サイズ・・・で、まあ許せるのですが・・・先頭の魚の様子がおかしい!明らかに後方の2匹に対して「ふたまわりは大きい」のです。
不用意には動けません。
3匹は上流を向いたまま、全く此方の気配に気づいてはいない。
視線を魚影に固定したまま考えます。
ルアーは先刻、いよいよ浅い水深に合わせて少し軽量な GH46 HUMPBACK に交代済み。リーダーもその際、劣化部分をカットして更新済みなので新鮮・・・恐らく問題は無い。
キャストは当然1発勝負でミスは許されないが・・・何処に落とすべきか?
淵の中心でいいなら簡単だが、その場合恐らく目の前に落ちてくる形になる後方の尺サイズ2匹が猛ダッシュでバイトする可能性が・・・。
尺サイズ・・・要るか? 要らないだろ?(笑)
狙いはあの「おかしな先頭の1匹」のみ!
確実に奴に喰わせる為、奴の視界前方に GH46 HUMPBACK を静かに着水させねばならない。いや・・・着水させればいい!恐らく、それを正確にこなすだけでいい。
緊張が走る。
非常に貴重なモノを目の前にしているという実感と、それを台無しにしたくないという不安が秒速で入り混ざり鬩ぎ合う。
ロッドを下段に構え、左手に優しく ハンプバック を摘み、ピッチング姿勢に入る。
一息深く深呼吸したところで、ゆっくりと息を吐き出し、吐き終わりと同時に静かに竿先を振り上げ GH46 HUMPBACK を撃つ! 水面やや上方を這いながら一直線に GH46 HUMPBACK が飛んでいく。
悪くない。
そうして、きっちりと狙いのスポットを捉え、サミングも決まり溶けるように着水!
絶妙だった。
着水と同時、サミング動作の流れで即座にリールのベールを返し、ハンドルに指を添え、バイトに備える!同時に視界では、先頭の大きな魚影が、着水した GH46 HUMPBACK目掛けて予想通りに猛ダッシュした姿が見えた。
そして次の瞬間・・・リールハンドルが止まる!反射的に巻き合わせつつフッキングを入れる!ロッドが曲がる!重みが伝わる!
直後、渓流では見たことの無い強烈な水飛沫が上がった!!
魚はバイトの後、私のフッキングに合わせて激しく水飛沫を上げながら反転!
驚いた事に、一瞬で水面を滑るように走って川を下り始め、いっきに3つ下流の淵まで逃走した!
私は手前に走られた事で弛んだラインを急いで回収しつつ魚に近寄るのだが、いよいよラインテンションが回復したところで、魚は再び反転!?
今度はドラグを鳴らしながら川を遡り始め、結局最初の淵のひとつ下の淵まで逃げ戻り、クネクネと暴れ続ける!
幸いフッキング具合は良く、その後は暴れる魚体をいなしつつ、騙し騙し岸に寄せて無事ランディング!
いざ水揚げてみると、改めてサイズ感はおかしくて・・・実測43cm。
この規模の渓流には似つかわしくないサイズ、そして似つかわしくない強烈な抵抗に久々に興奮でカメラを持つ手が震えました。
そうして狙いの大物を無事仕留め、気持ち的には既に満腹でしたが、魚止めはすぐそこなので、一応にも竿を振っておこうと歩を進めます。
(尚、先刻の大物の淵に同居していた「他の2匹の尺イワナ」は、大物をフッキングして淵に水飛沫が炸裂した時点で、何処に隠れたのか?一瞬で水に馴染むように姿をくらましました。)
魚止めは左右ふたつの小型の滝になっており、まずは右側の滝から確認してみたのですが・・・此処も何か様子がおかしい。
小滝が流れ落ちる小さく浅い淵の中、反転流が渦を巻いているのですが、反転流に乗って水面を流れる木の葉に混ざって「黒く長い影」が流れと一緒にうろうろと回遊しています!?
先刻の大岩魚で感覚が麻痺しておりますので、私も若干おかしくなっていて・・・
「尺イワナかな?」程度で何の緊張感も無く、そのままの勢いで GH46 HUMPBACK を反転流に投じたところ・・・これまた即座にバイトしまして・・・
35cmのイワナが釣れました・・・!(汗)
まあ見るからに「餌の流下を待っている感」が出ておりましたので、バイトに関しては当然の流れなのですが・・・それにしても、ちとサイズ感がおかしい。
43cmの直後の35cmなので何だか自然な感じですが・・・普段の釣行時なら歓喜しているでしょう?(笑)
もっとも流石に此の川の、此の状況の「異常さ」は確実に感じられていて・・・
期待をして「雨後」を見に来ていたはずなのですが、これはちょっと度を超えていて・・
山奥深く入り込んだ沢の中、薄っすらと得体の知れない気味悪さを感じます。
とは言え、もう隣に控えている残りの最後の魚止めの滝をやらないという選択などあり得ず、怖いもの見たさに近い期待感を抱きつつ、そっと淵を覗いてみたところ・・・
こちらの淵は更に小さく、滝から落ちた白泡で水面はほぼ覆われており、見た目に魚の姿は確認できません。
というわけで・・・最終確認がてらに、ルアーそのままに GH46 HUMPBACK を投じ、落ち込みの泡の中を強引に横切るように通してみたのですが・・・
軽くトゥイッチをかけた GH46 HUMPBACK が白泡を抜けようとしたタイミングで「ヌグ!」とした感触と重みが Whip Twich 573に伝わりまして!?そのままの勢いで強引に「重み」を白泡の中から引っ釣り出してみたところ・・・
これまた「黒く長い魚体」がデロデロと巻きつくように暴れながら白泡の中から姿を現しまして!?
36cmの岩魚が釣れました・・・!(汗)
山奥にある枝川の最上流、魚止めに辿りついて15分間程の間に起こった出来事。
呆気にとられるだけの3連発・・・怒涛の時間でした。
雨後、川を流され流下してくる水生・陸生昆虫を、我先に有利に捕食する為に川の最上流部の「優良な淵」を(大型に成長するような)賢い魚が占拠しようとする故に、今回最上流の滝つぼに、左右それぞれ35cm・36cmの2匹。
その下にある、ふたつの流れの合流部、いわば川の一番美味しい集約部に最大魚の43cm。そして、その背後に「おこぼれに預かる」が如く(姿をくらました)30cmクラスが2匹陣取るという棲み分け・・「野生の序列からなる最適な秩序」が、そこには確かに感じられます。
山奥に偶然見つけた小さな枝川へ、釣りの定番条件である「雨後のタイミング」で入ってみたところ、そこには見たことも無い「非日常的」の魚が文字通り「群れて」いて・・・それはもう「異世界」と言っても言い過ぎとは思えない驚きの光景でした。
釣りを終え、長い山道を独り黙々と歩き下るのですが、足取りはいつに無く軽く・・・(笑)
時折ロッドのグリップを握り込めば、先刻のあの大物とのやり取りが鮮明に思い出され、今、自分の背後にある渓谷には、「そういう魚」が現実に棲んでいると改めて実感すると共に無性に誇らしくも思えます。
しかし、その一方で「次は無いんじゃないか?」そんな心配というか恐怖に近い感覚も同時に沸くのです。
次に訪れた時には「大物どころか、魚の魚影すら一切見えない川」に変貌してしまっている事も覚悟しておかねばと・・・それぐらい渓流の資源は貧弱ですから。
此の場所が何人の人間に知られていのか知りようもありませんが、きっと、この場所を知る数少ない、互いに会ったことも無い釣り人同士の「自然発生的な暗黙の了解」で口外されることなく、奇跡的に維持できているのではないかと思うのです。
魚との出会いを求めて、ひたすら山々を彷徨い歩いてるうちに偶然発見し、偶然のタイミングで迷い込める異世界・・・それぐらいが丁度良いと思うのです。
そのくらいの神秘性があってこそ人は大切にすると思いますから。
【使用タックル】
ロッド : GH57-3LS WhipTwich573
リール : 2000番
ライン : PE 0.6号 + ナイロン5lb
ルアー:GH46、GH51 HUMPBACK ( TAKUMI IWANA )