FRESH VOICE

枯れ逝く川に棲む岩魚 ・・・

9月は悩ましい ・・・
いよいよ秋の本格ソルトシーズンが始まり海の様子が気になる ・・・ も、
一方で無性に山へ入って、禁漁までの1ヶ月の間、できるだけミノーをチェイスするトラウト達の姿を
見ておきたいとも思うから ・・・

台風の通過から数日経過した日
恵の雨による高活性を期待して、20年ぶりになる渓に入ってみた。
記憶では父とエサ釣りにて岩魚を釣った川 ・・・
程よい水量、豊富な魚影
川に下りた空間は、両岸からの木々にすっぽりと覆われ、とても涼しく、釣り易かった川の記憶 ・・・

そんな思い出を辿りながら、ようやく川への入り口を見つけ、
ウェーダーを履いて身支度を済ませ、しばし歩いて草木を分け入り、
記憶と重なる風景を眺めながら川に下り、目にした光景に愕然 ・・・

水が無い ・・・
沢の面影を残す、枯れ果てた風景 ・・・

状況に絶望して、他の渓流へ向かおうかとも思ったが、
「 何故川が枯れたのか ? 本当に水は無いのか ? 魚達は完全にいないのか ? 」 が気になり、
調査がてら、期待薄に枯れた沢を登っていってみたが ・・・

しばし登れど水は無く ・・・
それでも我慢して黙々と乾いた沢の中を登っていると ・・・
突如、向かう先方で 「バキバキ ! 」 と木々の折れる音 ! ?

「 ウォ ! 」 と驚かされて、移動する音の方向に視線を向ければ、
沢の右岸の森を疾走していく2頭のシカ ・・・

鬱蒼とした木々に囲まれた薄暗い森
川も枯れ、釣り人も入らないであろう森
真昼とはいえ、全く人気の無い静かな森は、シカ達の散歩コースだったもよう ・・・

だいぶビビらされて、いよいよ諦めて帰ったほうがいいかなとも思ったが、
「 鹿は何してたんだろう ? 木の実でもあるのかな ? 」 と、
しばし鹿のいた方向へと沢を登ってみると ・・・

ありました !
ちょっぴりですが水が ! !
砂利砂に染み込み、消えていってしまっていますが ・・・
確かに水があります !

俄然やる気がでて、視線を前へ向ければ、
音こそしませんが、ところどころに僅かばかりの溜り水を発見 !
そして点々とある溜り水は次第につながり、かすかながら徐々に 「 流れ 」 を形成 !

そこからは、歩を進めるに連れ、流れも少しづつ太くなり、
沢の上方からは小さいながら水のせせらぐ音も !
いよいよ期待は大きくなり、足取り軽く沢を進めば、
現われた淵はジンクリアに澄み、美しい !

枯れた川 ・・・
ようやく現われた期待できる淵に、はたして魚は避難し、生延びていてくれるのか ・・・
期待と緊張の1投 ・・・
魚がいれば、飢えに飢えていて、即座にバイトするはず ・・・
私は X-55 をピッチングでキャスト !
着水をやや雑に、大きめのアピールを見舞い、
即座にトゥイッチでアクションがてら水深を与えてみるも ・・・ 

無反応 ・・・

そして、ここからが地獄 ・・・
しばし川上へ沢を上り続けると、点々と程よい深さと大きさの淵が現われるも、
X-55 を撃ち込めど撃ち込めど、一向に魚の気配は無く ・・・

30 ~ 40分ほど無反応なままの渓を登り、
さすがに魚は絶えてしまったかと、諦めかけた時、目の前にした淵

淵の大きさ・深さは十分
落ち込み奥の穴も気になるし、手前左の大岩の下も気になる、期待できる淵 !
「 ここで居ないようならダメだろう ・・・ 」 と願いを込めた1投目 !

淵の最奥部、泡の向こうへ X-55 をキャスト !
着水と同時にトゥイッチをかけ、左右にステップを踏みながら泡から飛び出す X-55 !

・・・ と直後 !!

背後から黒い影が猛スピードで襲いかかり 、激しくバイト !

尺を欠ける雄のイワナ ・・・
少し口先が割れ、しゃくれ始めている ・・・
秋の気配 ・・・
この枯れかけた渓の中で逞しく生延びている証なのか ・・・

この後、同じような淵を点々と撃ちつつ、釣り登ってみるも、
残念ながら一切魚影は見られなかったのだが、
しばらく川を上り、いよいよ堰堤に近い場所まで来た時、
ここまでの静かな渓に、似つかわしくない不規則で不思議な音が ・・・

「 ゴボッ ! ゴボゴボ ! 」

しばし止まって ・・・ 再び

「 ゴボ ! ゴボボ ! 」

明らかに違和感のある音に、誘われるように歩を進め、音に近づき目にしたのは ・・・

湧き水 !

浅い川の真ん中、ゴロタ石の間から不規則に、時折音を立てながら噴出しておりました !

どうやらこれが、この沢の現在の水源のもよう ・・・
そういえば付近の集落では井戸水が枯れたり、水量が落ちたという話を新聞で見た記憶が ・・・
確か原因と疑われていたのは ・・・
トンネルの掘削工事による影響 ・・・

地下の水道が変わってしまったのか ・・・

澄んだ綺麗な水がとうとうと湧き出す様子を眺めながら、
すぐ先を見れば、水溜りになってしまった堰堤下のプールの姿 ・・・
これより上から水が流れていない事を示していた ・・・

思えば海にしろ、山にしろ楽しみな釣り場は減っていくことが多い ・・・
場所的に立ち入り禁止なったり、
自然災害等の影響で場所自体が壊されたり、
開発行為等により無機質に護岸された結果
魚の着き場が無くなり、かつての魅力を失ってしまったり ・・・
要因は様々だが、増えるよりは減ることのほうが多い印象がある ・・・

この渓流も、記憶とは大きく異なる川になってしまっていた ・・・
水道が変わった結果、枯れかけている川 ・・・
沢の途中から湧き出している事は、せめてもの救いではあるが ・・・
今後どうなるのだろうか ・・・ ?

この流れの中にたった1匹逞しく生きているあのイワナ ・・・
傷ひとつ無く、美しい容姿をした、あのイワナ ・・・
己が最後の一匹だと知らぬままに、虎視眈々と淵奥に棲み、
エサを獲り勇ましく成長している、あのイワナ ・・・

彼は今、何を思うのだろうか ・・・

今回の使用タックル

ロッド : デストロイヤー(フェイズ1) F1-61XS
リール : シマノ 2000
ルアー : X-55 ( STREAM REACTION )
ライン : ドラゴンコール 8braid PE 0.8号 + フロロ 4lb