「スプリガン彫金」最後はヒトの手、鬼手仏心。 | Megabass-メガバス

「スプリガン彫金」最後はヒトの手、鬼手仏心。

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ついに100個オーバーのテストサンプルに突入したスプリガン。90年代後半にデビューしたメガバスのベーシック、グリフォン以来の大仕事かもしれない。現在、世界各地でスタンダードとして愛用されているグリフォンは、1987年にデビューしたメガバス最初のプラグ、Z-CRANK(ウッド)の釣獲力を量産性に優れたABSボディとアナザーデザインで継承した普遍的なシャロークランク。ダイワブランドでいえば、「ピーナッツ」みたいな存在か。

 

一方、昨年からテストを重ねてきたスプリガンは、アメリカで活躍するアーロンはじめトーナメントアングラー達とともに、効率を重視したリミットメイクというミッションにおいて、あらゆるシャロー~ミッドフィールドで使い倒せる普遍性を追求したコンペティション特化型のクランクベイト。STW(サポートトゥウイン)プロジェクトで開発中のルアーだ。

 

アメリカの広大なシャローは、トーナメントレイクの90%以上がマッディウォーターで魚たちの視界が効かない。リップラップあり、レイダウンあり、スタンプあり、東海岸のとあるレイクでは、底に何もない赤土のワイドオープンエリア(クランクを引いても当てられるストラクチャーになかなか遭遇しないとか)だったり、西海岸や南部のフレッシュウォーターでは、グラスやウィードが繁茂する広大なシャローだったり・・・ひとくちにシャローといっても、日本で目にする風景とはアナザーワールドである。なので、それにアジャストさせるためプロのルアーボックスの中には、シャロークランクだけでも恐ろしい数のタイプとサイズ、浮力のチューニングをストックしてある。彼らも実は、ウンザリしている?

 

 

STWでは、なんとかこれをスッキリ数種類にまとめられないものか?が、テーマとなった。

 

①    一つのクランクベイトで、シャローからミッドまでリトリーブできること。

②    バンピーなボトムやストラクチャーにヒットしたとき、3次元のエスケープアクションが出せること。それが、「素早く鋭く」かつ、ダイナミックなフラッタリング「ヒラウチ」アクションで、強くアピールすること。

③    何が沈んでいるかわからないシャローで、スタック(根がかり)しにくい強力なスタックガードとして機能するある程度のロングビルデザインであること。

④    何も当てるべきものがないシャローやミッドレンジの中層でも、タダ巻きで千鳥起動で泳ぐこと。

⑤    これらアクションが、デッドスローリトリーブでも、強い波動を発する撹拌力を「ハイピッチ」で発揮すること。

⑥    障害物回避、スタックしそうなストラクチャーから離脱できる「軽比重」「高浮力」であること。

⑦    高浮力・超軽量ボディなのに、アゲインストの強風化でもロングディスタンスキャストができること。

 

おおよそ、上の7項目が挙げられ、それをたったひとつのクランクベイトでこなす。

正直、私だけじゃなく他の開発アシスタントたちも頭から煙が出そうになった。

何かに特化したスペシャルは、開発焦点が絞られているため、むしろ作りやすい。しかし、グリフォンとかPOPXとかDOG-Xなどのマルチパフォーマンスを要求するベーシックは、あれもこれも想定して開発しなければならなので、最大公約数がピンになり、このゾーンを細い針で刺し通すようなシビアな開発力が要求されてしまう。あらゆるシャローでの釣りの経験値、シャローにおける魚のあらゆるパターン。経験値だけがもたらす引き出しの数の多さがなければ、まず作れない。私自身の30数年間で経験したシャローの釣り。アーロンたちメガバスのUSプロチームの凄まじい数のシャローにおける釣獲経験値。これが頼りだ。シャローの釣獲経験値をカタチに変換するのが我が指先。

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ルアーのモックアップは、実験段階においては、さまざまなタイプのプロトは、CAD/CAMがこなす。最近のコンピュータワークは作業の効率化を図り、想定するさまざまな現象に対応するサンプルを作る上では有効だ。しかし、最後は、ヒトのカンや経験値が大いに支配すべき分野が、ルアーエンジニアリング。この図式は普遍だし、不変でなければいけない。ここが、ルアーが他の一般工業製品と違うところかもしれず、また、あえていうなら、クルマのサスセッティングやエンジン出力特性やエキゾーストノートの調律に通じるものがあるかもしれない。ヒトの感性で大いに左右される崇高な分野であると信じている。

 

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スプリガンを彫金しながら細部のフォルムを整える。そしてグリフォンのDNAを宿す。

良いクランクベイトができたと思う。同時にまた、グリフォンの凄さにも改めて自画自賛してもいいかなと思う。ルアーづくりって四半世紀やっていても終着点がないね。

 

 

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